実家がアパートでよかったこと

私は小さい頃から、自分の部屋というものに強く憧れていました。

 

そんな私の実家は、アパートです。

 

アパートの間取りは台所の他に、6畳の部屋が3つ。そのうちひとつを3つ歳の離れた妹と共有していました。

 

貧乏だったかと訊かれると、まあ確かにそこまでいろんなものは与えられていませんでした。当時の流行りだったエンジェルブルーやポンポネットなどのブランド服は1着も買ってもらえませんでしたが、私の周りは私も含めてUNIQLOのフリースに3本線のジャージみたいな格好ばかりだったので、特に浮いた記憶もありません。人並みに遊びに連れていってもらったし、ご飯もお腹いっぱい食べられたので、貧乏だなあと卑下するような生活はしていませんでした。

 

ただそのアパートは父親の両親が建ててくれたもので、最初はその1室に父親が住んでいたのです。そこに母親が嫁いできて、やがて私と妹が生まれ、特に引っ越す理由もなく、私が家を出た今も私以外の3人はそこで暮らしています。

 

そんなアパート暮らし、当時の私にとって正直あまり好きなものではありませんでした。アパートってなんとなく格好悪い感じがするし、友達の家は庭付き一戸建てだったり、マンションにプールがついていたので、それがとても羨ましかったのです。また、アパート暮らしだと家庭が複雑なんじゃないかと思われたり、勝手に可哀想だと同情されたりするんじゃないかと気にしていました。実際はそんなこと全くなかったのですが。

 

そんなアパート暮らし、今一人暮らしをするようになって振り返ってみると、実はいろいろ良かったことがあったのです。今の私はこの家無くしてあり得ません。今回は、特によかったなあと思うことを4つほど挙げていきます。

 

 

 

自分の非を認めることが出来るようになった

 

例えば親に怒られたとき、ちょっと素直になれなくて廊下や階段を駆けて自分の部屋に引きこもるときもあったと思います。でも我が家には自分だけの部屋がありませんでした。また、どの部屋も引き戸なので木の棒でも用意しておかない限り、子供の手で扉を押さえ続けるには限界があります。

 

もうこうなると外に出るしかないんです。でも鍵を閉められたらと思うと、飛び出す勇気はありませんでした。顔を上げれば有無を言わせない空気を纏った親の顔。腹を括るしかないのです。

 

だからその場で自分のしたことをもう一度よーく考えます。それが間違えていたから叱られたんだと気付き、考え、子供ながらに反省します。そして謝るしかないんです。それもまたぼそぼそ言ってしまって、「声が小さい!」なんて怒られたりするんですけど(笑) お陰で悪いことしたなあと思ったらちゃんと謝ることも出来るようになりました。当たり前と言ったら当たり前なことなんだけど、結構非を認めずに謝れない人ってたくさんいると思います。

 

反抗期に感情の抑え方を考えた

 

中学校くらいになると、ほぼ誰にでも反抗期ってやつが来るじゃないですか。程度は人それぞれだけど、なんとなく親が煩わしくなってしまったり。それって成長過程において必要なことだと思うんですよね。

 

でも我が家ではあまり派手に反抗すると、もれなく居場所がなくなります。引きこもる部屋もありません。イライラしても家族の視線が突き刺さり、ただただ居心地が悪いのです。

 

なので必要以上にイライラしないようにだとか、親に何か言ってしまう前に頭で今何を言おうとしたか考えて踏みとどまったり、出来る範囲で感情的になりすぎないように気を付けました。

 

それでも反発してしまうときはありますが、普通の反抗期よりはマイルドだったんじゃないかと思います。

 

集中力が身に付いた

 

我が家は今の隣に子供部屋があり、今に背を向けるように学習机が置かれています。宿題やテスト勉強はもちろんここでやります。でも子供部屋の引き戸は開け放たれたままです。

 

なぜ空いたままなのかというと、引き戸で仕切ると居間が凄く狭く感じるから母親が嫌がります。また、子供部屋にだけあるエアコンの恩恵を居間に届かせるため、引き戸は滅多に閉められません。

 

居間では常にテレビがついていました。そして家族同士でお喋りもしています。それを背後に感じながら、私は勉強をしていました。今思えば、音楽を聴きながらとか耳栓すればとか、遮る方法はあったと思います。でも当時の私は騒音の絶えない空間でも普通に勉強していました。今では逆に、静かすぎると落ち着かなくて集中するのが難しいです。

 

家族間の交流が途切れることはなかった

 

家族4人とも、家にいるときはだいたい居間に集まっていました。子供部屋で過ごすことも出来ましたが、なんとなく誰からともなく居間に腰をおろします。

 

狭くて仕切りのない空間でで過ごす時間が長かったので、家族が常に視界に入っているのは当たり前。何なら寝る直前まで6畳の居間に4人、こたつを囲みながらテレビを見て談笑していました。普通の家では食事が終わり次第、各自部屋に篭ることが多いと聞いたときには驚きました。我が家は特に篭る場所もないので、食べ終わって台所に食器を下げてもまた居間に戻るんですよね。

 

 

 

よく家のことを友達とかに話すと「本当に家族仲がいいね!」なんて言われますが、多分うちの家族も自分の部屋があるような家だったらそこそこの仲だったと思います。環境が私たち家族の繋がりを強くしてくれたといっても過言ではないかと。

 

そんなアパートで20年ちょっと暮らした後に、私は実家を出ました。会社が遠かったのでもう少し通いやすいところに引っ越したのです。

 

一人暮らしを始めることで、私の夢はひとつ叶いました。ついに自分だけの居場所、誰にも邪魔されない私の根城を手に入れたのです。

 

誰も私を咎めない空間、何をしても許されるこんな空間を、もしも子供の頃から持っていたら私はちゃんとした大人になれたのかな。もしかしたら、学校にも行かずに引きこもって怠けていたかもわかりません。

 

私には、あの小さなアパートが合っていたのかもしれません。今の私があるのは一緒に過ごした家族と、あの部屋のお陰だと思っています。昔は恥ずかしくて自分の家がアパートだということを伏せていましたが、今は何とも思いません。誇りとまではいいませんが、アパート暮らしも悪くないです。狭いけれど、騒がしいけれど、ひとりの時間はないけれど、寂しい時間はほとんどなかったです。楽しくて、明るくて、あったかい、この3つだけは大きな家にも負けません。

 

さて、そんな私の次なる夢は、部屋の中に螺旋階段のある窓の多くて明るい庭付き一戸建てに住むことです(笑) せっかくなら夢はでっかく。でももし私がアパートで所帯を持ったら、その時はこの話を家族にしてあげようかな。

 

狭い家も、悪くないよ。